トトちゃん：ミニチュアダックスフント 会陰ヘルニア
トトちゃんは、ミニチュアダックスフントの男の子で、迷子になっていたところを拾われたワンちゃんです。そのため、正確な年齢はわかりませんが、保護したときから自力でうまく便が出ず、お尻の部分が盛り上がって変形していました。
これは骨盤隔膜という骨盤の穴から臓器が脱出しないようになっているところに、未去勢のためにホルモンの影響で穴があいてしまい、臓器が外に出たことが原因になります。
肛門の周囲の部位を会陰と呼ぶため、ここから臓器が脱出する状態を「会陰ヘルニア」といいます。
「会陰ヘルニア」を治すには、外科手術が有効です。
最初にお腹を開けて、直腸を引っ張り腹壁に固定する手術を行います。
続いてヘルニアの原因になる睾丸の摘出を行います。
トトちゃんは陰睾といって睾丸がお腹にあり、かなり大きくなっていました。幼齢期に去勢をしないと、このように腫瘍化することがあります。睾丸を摘出し病理検査に送ったところ、「セルトリ細胞腫」という腫瘍でした。
最後に会陰ヘルニアの整復手術になります。手術方法には複数の術式が報告されています。
会陰ヘルニアは再発することも少なくなく、現在でも術式について論議されています。
今回は内閉鎖筋を使って、骨盤腔の穴を塞ぐ手術を行いました。会陰ヘルニアは片方のみ症状で来院することが多いのですが、片方だけ手術をするとその後にもう片方もヘルニアを起こす可能性が高いため、両側同時に手術を行いました。
手術後はすっきりと排便が出るようになり、術後数ヶ月しても会陰ヘルニアも再発することなく、元気に回復することが出来ました。